人工衛星観測ガイド
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 はじめに
 夜空を何気なく見ていると,ふと,星空の中をゆっくりと移動していく光点を見かけることがあります。これが人工衛星です。人工衛星の観察と言われれば,初めての方は「見えるの?」と首を傾げるものですが,これが結構よく見えます。何気なく夕方や明け方の薄明の空を眺めているだけでも一時間に数個は見つけることができるでしょう。
 肉眼でも確認できる人工衛星の数は300とも400とも言われ,日に日にその数は増えています。多くは3等級以下の明るさですが,中には1等星くらいの明るさになって,街中でも楽に観察できるものもあります。
 上手に利用して観望会などに華を添えるもよし,ただ気楽に夜空を楽しのもよし,このホームページの予報を参考にしていただいて,しばし有意義な時間を過ごすお役に立てれば幸いです。

 人工衛星ってどんなもの?
 人工衛星は文字通り人工の衛星です。衛星とは月に代表されるように惑星の周りを回る星のことを指します。ですから,人工衛星とは「人間が作った金属の機械で,月のように地球の周りを回っているもの。」と考えていただければいいと思います。
 難しい理屈を上げるときりがないのですが,簡単に人工衛星の理屈を説明してみましょう。まず,地上からある物体を放り投げることを想像しましょう。人間が物体を投げると,人力には限界がありますから,せいぜい数十メートルぐらいで物体は放物線を描いて地上に落下します。落下するのは,もちろん地球に引力があるためです。では,機械や火薬の力を使ったらどうでしょうか?
 物体はさらに数百メートル先まで飛んでいきます。さらに,もっと強力な道具を使えば数キロ,数十キロの彼方へ,物体を飛ばすことも可能でしょう。極端なことを言えば数千キロ,数万キロと,放り投げた物体は地上に落下することなしに,自分の後方へ地球を一周して戻ってくることになります。このときの理論的な速度は,およそ7km/秒です。
 もちろん地上には空気の摩擦がありますから,このようなことは不可能です。しかし我々は現代科学技術の粋を尽くしてロケットで物体を空気の摩擦のない宇宙空間へ運び,7km/秒まで加速することができます。これが人工衛星なのです。
 地球の大気(空気)の層は150〜200kmの高さにまで達します。ですから人工衛星もそれ以上の高さにまで打ち上げなければなりません。我々が人工衛星を地上から眺めるということのは,数百km上空の宇宙空間の物体を見るということなのです。

 人工衛星が見えるわけ
 では,どうして人工衛星は見えるのでしょうか?冷静に考えると,とても不思議です。
 人工衛星は自分で発光するようなものはほとんどないので,太陽の光を反射して見えます。しかし,地上が昼間の際には,空が明るく観察は不可能です。このため,地上が日が暮れていて人工衛星には太陽の光が当たっているということが,人工衛星が観察できる最低条件と言うことになります。

Fig.1

 この条件は図を見ておわかりいただけるとうり,(衛星の軌道高度や季節,観測地の緯度によっても違いますが)原則的に夕方や明け方にこのような条件になることが分かります。

 ここで,人工衛星の可視条件に関する特性をまとめてみましょう。

 1.人工衛星は原則的に夕方,明け方の空に見られることが多い。
 2.軌道が低い衛星は可視可能な期間が短く,逆に軌道が高い衛星ほど可視期間は長い。
 3.北半球では,冬より夏の方が可視期間が長くなる。(人工衛星がたくさん見える)
 4.地球の影の中に入って見えなくなったり,影から出てきて見たりすることもある。

 人工衛星の明るさ
 もちろん人工衛星が明るく見えるかどうかということも重要な問題です。人工衛星がどのような際に明るく見えるのか次にまとめてみましょう。

 1.衛星と観測者との距離が小さいこと。
 2.太陽ー衛星ー観測者の角度(位相角)が小さいこと。
 3.衛星自体が大きいこと。
 4.衛星の表面の材質が太陽光を反射しやすい材質であること。

 1と2は計算から求められますので,ある程度参考にできます。しかし,3と4に関しては衛星自体の問題ですので,どうにもならない面があります。大きさはあるのに黒っぽい色をしてて,明るく見えなったり,距離があるのにやたら明るく見えたりというケースももちろんあり得ます。
 2は一見,イメージがつかみにくいので次の図を見て下さい。

Fig.2

 要するに観測者から見て衛星が正面の方向から太陽光を受けているか,裏側から受けているかという違いです。もちろん前者の方が太陽光の当たっている面積が大きいので衛星は明るく見えます。一般的に太陽が沈んだ反対の方角に見えているときの方が,衛星は明るく見えるということになるのです。

 こんな感じに見えたら人工衛星
 では,実際に表に出て人工衛星を観察するとしましょう。人工衛星は日の入り後90分以内。(日の出前90分以内)が時刻を選ぶ目安です。周りに比較できる星がたくさんある方が,衛星を見つけやすいので,できるだけ星がたくさん見えるような条件の下で観察は行うのが好ましいです。(月が空に出ていなかい夜を選んだり,街明かりの影響が少ないところまで出かけられればベターです。)
 普通に夜空を眺めていても,よほど星が見にくくない限り,1時間に数個の星空の中を動いていく人工衛星と思われる光点を認めることができるはずです。飛行機とよく間違えることがありますが,飛行機は明らかに青や赤のランプと思われる2つ以上の光源に見えたり,人工衛星と比べると動きが速いので落ち着いてみていれば明らかに違いは分かります。人工衛星は速くても1秒間に1度以下の速さでゆっくり動きます。(夜空を3分以上かけて横切っていくイメージ)

 まだ高度が低いうちは,観測者との距離があるため人工衛星は暗く見え,高度が上がって観測者との距離が最小になる前後にもっとも明るく見え,また高度が低くなるにつれ暗くなっていくというのも,人工衛星の特徴です。

 しかし,人工衛星の見え方も様々あるということも押さえておきましょう。

 1.変光・フラッシュ
   人工衛星の回転によるためのものですが,特に部分的に太陽光を強く反射する場合
   には,ぴかっ,ぴかっ,っとフラッシュします。
 2.出現・消滅
   地球の影の中から出てきたり,入ったりしますと,すーっと,人工衛星が現れたり
   消えてしまったように見えます。UFOと勘違いされてしまう場合もありますので
   気をつけましょう。
 3.編隊
   もちろん似た軌道を複数の人工衛星がもっていれば,複数の人工衛星が編隊を組ん
   でいるように見えます。同時に打ち上げられた衛星の一部にこのような衛星がある
   そうです。
 4.なんだかよく分からない,燃えてるような感じ
   人工衛星も時間がたつと空気との摩擦で地上に落下してくるものがあります。この
   とき人工衛星は大気との摩擦熱で火だるま状態になります。人工衛星が落下してく
   る様が目撃されると,しばしば騒ぎになります。

 また,3や4のように見える機会は滅多にありません。もしも,このような場面に出くわしましたら大きなニュースです。 ぜひ,ご一報ください。

 ※注意 変に曲がったり,戻ったり,不自然な動きをするものは人工衛星ではありません。
     天文学や世界秩序に一石を投じる結果にもなり得ますので,しっかり記録しておきましょう。

 
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