福岡工業大学の小型衛星「FITSAT-1」のLED発光実験を観測するための情報を非公式に発信します

望遠レンズで撮影をする

FITSATは人工衛星の中でも極めて暗いため、広角、標準クラスのレンズでは、その繊細な光を記録することは難しいと思われます。ここでは、100mm~300mmクラスの中望遠、望遠レンズを使った撮影方法について紹介していきます。

FITSATを撮影するには「Heavensat」で調べた位置情報を元に、実際の星空のどこを通るのか知っておく必要があります。もう一つ、カメラの設定も決めておかなければなりません。FITSATは7~8等級の明るさで見えると予想されていますが、実験が始まったばかりで観測例がほとんどなく、実際の明るさがどの程度になるか分かっていません。まずはFITSATのLED発光が予想より暗くても撮影できるような設定にします。

機材

撮影に必要な機材は次のとおりです。

1.カメラ
デジタル一眼レフであれば何でも良いです。ISOを高く設定できる高感度に強いカメラだとより良いでしょう。

2.レンズ
先に書いたように、まだ観測が始まったばかりですので、どのようなレンズが撮影に適しているか、はっきりとは分かりません。LED発光が予想より暗いかもしれないので、中望遠以上の明るいレンズが良いでしょう。 ただし、天体観測初心者は 、焦点距離の長い(倍率の高い)レンズだとフレーミングが難しいです。一度、事前に練習で撮影してみたほうが良いでしょう。

3.その他
焦点距離の長いレンズを使用すると重くなると思われます。機材の重みで倒れないよう、しっかりした三脚を用意しましょう。また、連続して撮影するので、レリーズかリモコンが必要です。

4.赤道儀(あれば使いましょう)
赤道儀をお持ちの方は、ガイド撮影をした方がよいです。赤道儀で星に合わせてカメラを動かせば、星が点像で撮影されFITSATの光跡が分かりやすくなります。 ポラリエやアストロレーサーなどの簡易的なものでもよいでしょう。 また、衛星を追尾できる多機能な赤道儀であれば、追尾撮影しても良いです。FITSATを追尾すると光跡にならず点にしか写りませんが、露出時間の分、光が蓄積されるため明るく写すことができます。

Heavensatの位置情報を印刷する

パソコンを持って行っても良いですが、画面を見ると明るすぎて瞳孔が閉じてしまい、暗い星がしばらく見えなくなってしまいます。FITSATを観測しやすくするためにも、印刷した位置情報を用意しておきましょう。

1.印刷
FITSATが点灯する位置で、Heavensatのスクリーンショットを取って白黒反転させて印刷します。星図をお持ちの方は、星図に軌道を書き込んでも良いでしょう。

2.必要な情報の書き込み
Heavensatで、前後数分ずつのポイントを書き込みます。点灯時間が直前に変更になる場合がありますので、例えば2:17から2分間点灯する場合、2:16~2:21くらいの位置をプロットしておけばよいでしょう。 また、同時に方角と仰角を書いておけば、観測の時分かりやすくなります。
FITSATの軌道要素は毎日変わるため、出かける直前に確認し、変更があれば修正するか新しいものを用意します。

3.撮影範囲の抜き出し
点灯時刻の航跡の間で、なるべく明るく分かりやすい星のある場所をピックアップします。例えば、オリオン座のベテルギウスのそばを通る場合、ベテルギウスを目印にすればカメラのフレーミングはやりやすくなります。
使用するカメラとレンズの組み合わせで、カメラの画角が分かりますので、どの範囲が撮影されるのか星図で確認してください。このとき、明るい星が画角に入れば、撮影しやすいです。 複数のカメラやレンズを使用する場合は、その分だけ撮影範囲を確認してください。

場所の選定および観測の注意点

撮影場所の決定とその他の注意点です。

1.撮影場所
FITSATの予想等級が8等級と暗いため、街中で撮影するのは難しいと思います。外灯がなく、なるべく暗い、天文同好会などがよく観測に利用するような天の川が見える場所がベストです。もちろん、FITSATが通る方角が開けていなければなりません。
FITSATは新月近い天体観測に条件のよいときに点灯させますので、他の天体観測している方と一緒になる可能性があります。他の観測者の邪魔にならないよう、車のライトなどはすぐに消すようにしましょう。マナーを守り、無用なトラブルは避けましょう。

2.ライト
印刷したFITSATの情報を見るにはライトが必要ですが、通常の懐中電灯だと明るすぎて瞳孔が閉じてしまい、暗い星がしばらく見えなくなってしまいます。これを防ぐため、懐中電灯に赤セロハンを何枚か重ねてかぶせて暗くします。もしくは、赤いライトが付いているものを使いましょう。

撮影

実際の星空の撮影で難しいのは、ピント合わせとフレーミングです。FITSATの撮影も、星の撮影方法と同じです。星の撮影方法はいろいろな書籍もありますので、それを参考にしても良いです。ここでは、基本的なことを説明します。

1.ピント合わせ
まずは、フォーカスをマニュアルにします。最近のレンズは無限大を越えてピントリングが回ります。無限大のマークのところで星にピントが合うとは限りませんし、きれいに撮るためには正確なピント合わせが必要です。
まずは明るい星、例えば木星やシリウスなどの星をフレームに入れます。ライブビューをカメラのモニターに映し、目的の星が入るようにして最大に拡大します。レンズのピントリングを少しずつずらして、もっとも像が小さくなる場所で止めます。
このとき、明るい星だと、液晶が飽和して像が小さくなる場所は分かりづらいと思います。そのため次に、2,3等級の星を使って更に正確にピントを合わせます。最初と同じように、像が最小になる場所でピントリングを止めます。
2段階で調整するのは、いきなり2等級の星を使うのが難しいからで、まずは明るい星である程度合わせてから、さらに正確にピントを合わせるためです。

2.フレーミング
事前に調べた撮影範囲に合わせて、カメラをフレーミングします。このとき、通常より明るめの露出で撮影すると星が良く写るので、フレーミングが合っているか分かりやすくなります。このように撮影しながら星の位置を確認して、少しずつ位置をずらしてフレーミングしてください。

3.露出の設定
LED発光の予想等級が8等級と暗いので、なるべく暗い星まで写るように撮影します。まずは、FITSATを捉えるために、ISOは最高感度に、レンズの絞りは開放にしてください。
あとは夜空の条件に応じて露出時間で調整します。試し撮りをして、撮像が暗ければ露出時間を長く、逆に明るければ露出時間を短くします。
このとき、露出時間は1秒以上にしましょう。FITSATの明滅は、10Hzですので、例えば1秒露光で10個の点が撮影できれば、FITSATであると同定しやすくなります。このため、1秒でも撮像が明るい場合は、ISO感度を下げて露出を合わせます。モールスの場合も同様です。

4.撮影
このように、準備することが多いので、時間に余裕をもって撮影に望みましょう。実際の撮影は、前後に余裕を持たせて、できれば±数分くらいの間、連写をします。

同定

FITSATが写っているかどうか確認します。

1.写り方
FITSAT以外の人工衛星がたまたま写り込んでいることもよくあります。撮影したコマのうち、破線が写っているものをピックアップします。
このとき、10Hzで点滅していることが確認できれば間違いないでしょう。FITSATサポーターズが撮影した写真は、随時本ホームページに掲載しますので、それと見比べていただいてもよいでしょう。 FITSATが写っていたら、撮影場所、機材など基本情報と合わせて、福岡工業大学広報課(kouhou@fit.ac.jp)や当サイト(fitsat.faq@gmail.com)まで是非お送りください。お待ちしております。

2.同定できない場合
よく分からないけど何か線状のもの写っているなど同定できない場合は、こちら(fitsat.faq@gmail.com)で同定できる可能性がありますので、撮影データを添えてお送りいただければと思います。

ロケハンと練習

以上の撮影方法は、カメラは得意でも天体観測初心者の方にはハードルは高いです。そのため、事前に練習しておくことをお勧めします。

1.ロケハン
撮影地を決めたけれども行ったことがない場所、もしくは夜中に行ったことがない場所の場合、夜中にロケハンに行っておくことをお勧めします。一度行って、方角や開け具合、外灯の有無など確認してください。

2.練習
事前に撮影の練習をしておきましょう。
できれば、ロケハンをした撮影地で実際に撮影する時間に練習をしておけば、方角や露出など分かりますので役に立ちます。現地でなくても、街中に住んでいる人は、近くの公園などで練習しても良いです。実際に、事前に決めた撮影範囲にフレーミングして撮影してみましょう。意外と難しいことが分かると思います。現地で慌てないためにも、ぜひ、練習はしておいてください。